PKB(バリ・アート・フェスティバル)を見てきました!

毎年6月中旬開催のバリ・アート・フェスティバル。「楽園の島」が「芸術の島」へと姿を変える一ヶ月を体感。(sueca)

こんにちは、バリ島ナビのsuecaです。
毎年6月の第2土曜日から7月の第2土曜日まで、4週間に渡って開催される「バリ・アート・フェスティバル」。正式名称「Pesta Kesenian Bali」は、こちらではPKB(ペーカーベー)という名で親しまれる芸術の祭典。バリ舞踊&ガムラン・マニアには毎日数種の芸能が堪能できるイベントとして知られ、この時期にバリを訪れる熱心なファンも。芸能はチョット苦手…という方でも、所狭しと軒を連ねる屋台で本場の味を試し、家族連れで賑わう衣類や雑貨のテントをひやかせば、ローカル気分を存分に楽しめます!

今年(2009年)が第31回目という長い歴史を持つこのフェスティバル。インドネシアが経済危機だった時代は「今年は中止らしい」という噂も飛び交ったものの、「こういう御時世だからこそ、芸術だろうが~!」という、非常にバリ人らしい意見の元に、しっかりと現在まで存続中です。
メインとなる会場は、デンパサール市のタマン・ブダヤ(通称:アート・センター)。地方でも芸術祭が観られるように、との計らいで、数年前には各県の文化会館で公演を行った事もありましたが、現在はアート・センター及び、すぐ脇のバリ芸術大(ISI)が会場。初日のみ、デンパサール市のレノンにあるププタン広場周辺で、大統領も参列するオープニング・パレードが行われ、民族衣装の各県代表や舞踊団が華やかに着飾って演奏し、踊りながら沿道を練り歩きます。
屋外大会場アルドハ・チャンドラ

屋外大会場アルドハ・チャンドラ

アートということで、絵画などの展示もありますが、やはりメインは舞踊とガムラン音楽。毎日3~5公演のバリ芸能プログラムが組まれています。

その中でも一番の人気は、バリ州内の7つの県と、デンパサール市の各代表グループによる「パラド・ゴン・クビャール」。ちょっと前までは対抗戦という意味合いの「ロンバ・ゴン・クビャール」や「フェスティバル・ゴン・クビャール」という名称であったものの、各県応援団があまりにもヒートしすぎて、相手側の演奏中にヤジを飛ばしたり、飲料水のボトルを投げたり、という騒ぎが絶えなかったため、勝ち負けの評価をその場で出す対抗戦を止め、PKB開催前に審査して順位を決めるシステムに。また「ロンバ」から、演奏会や競演会という言い方の「パラド」に変えたり、順位制を無くしてみたりして、主催者側もいろいろ苦心している様子が伺えます。しかし、何と言われても、ゴン・クビャールは血湧き肉踊る熱い楽器。数か月の練習の成果を力いっぱい出し切る本番には「対抗戦」がピッタリではないでしょうか…?実際、いまだに「ロンバ」と呼ばれ続けています。
室内会場のクシラルナワ・ホール周辺

室内会場のクシラルナワ・ホール周辺

この周辺は5会場が隣接する密集地帯

この周辺は5会場が隣接する密集地帯

また、バリ芸能だけでなく、インドネシア各地の伝統芸能も披露される他、シンガポールや韓国など海外のグループによる各国の芸術公演も。日本やカナダなどからは、それぞれの国でバリ舞踊を学ぶ芸術家が、新しいバリ芸能作品を創って参加するなど、期間中は盛りだくさんの芸術プログラムが目白押し。

そんなPKBを体験してみましょう!

朝の会場
売り子も少なく、清掃をしている係の方が目立ち、人影まばらな朝の会場。それでも平日の午前中というのに家族連れをパラパラと見かけるのは、PKB開催時期が、毎年ちょうど学校の休みと重なるためです。
屋台やテントも開業準備を始めたばかりなので、特に見るものもなく、ウロウロと歩いていたら、遠方からガムランの音が…よっしゃ、芸術祭ぽくなってきたぞ。
ショッピング・ゾーン I&II
芸術に少し浸った後は、会場の大半を占める「ショッピング・ゾーン」へ足を向けてみます。
まずは屋外会場アルドハ・チャンドラの1階部分。エアコンがじ~んわりと効いているこの場所は、インドネシア各地の州からの出店が大半を占めます。州の特産品に混じって、銀行の出店ブースが毛布を売っていたりするのが不可思議。州から公務員が送り込まれて店頭に立つんだと思うのですが、まだ開店してないブースも多く、インドネシアらしい時間のルーズさに感心。

次に、ちょっと離れた半屋外の店舗群へ。ここはバリ州の各県が特産品を売るエリアで、宗教用品が多いのが特徴。質やデザインの良いものが扱われているようだけれど、高級な美術工芸品よりも、あまり値が張らない物に人気が。もちろん値切り交渉は必須です。

バリの郷土料理だ!
県の特産品展エリアのすぐ近くには、県の郷土料理が集まった「スタンド・バリ・クリネール」が。なぜ今まで企画しなかったのかが不思議な、今年からできた御食事コーナーです。
バリの各地方の名物料理が、お手ごろ価格で食べられるし、本場の味付けなので、おいしさは太鼓判。価格がバーンと張り出されている店もあるので安心。朝ごはん抜きで、ちょっと小腹も空いてきたので、公演鑑賞前の腹ごしらえにブランチ・タイム。この時は、クルンクン県の料理コーナーに陣取ってナシ・セロ・チャンプールとデザートを注文してみました。
ナシ・セロ・チャンプール 5000ルピア

ナシ・セロ・チャンプール 5000ルピア

「ナシ・セロ」は角切りの芋が入った混ぜご飯。おかずはピンダン(塩漬魚)にサンバル・マタという生サンバル添え。そして、クルンクンの名物料理「スロモタン」。これは、生野菜や豆類に、削ったココナッツの辛調味料を振りかけ、さらに辛~い液体ソースをかけて和えた料理。オダラン会場の夜店で売っている、変に粘ったソースの甘いスロモタンではなく、正真正銘クルンクンで食べた味がする! sueca、この「スタンド・バリ・クリネール」ためにPKBに通いつめそうな気が…

エス・プテール 3000ルピア

エス・プテール 3000ルピア

デザートの「エス・プテール」は、ココナッツ・ミルクのシャーベット。結婚式などのビュッフェでよく出されるので、インドネシアのおやつかと思っていましたが、売り子のおばちゃんいわく「クルンクン名物」らしいです。緑豆入りがポピュラーですが、ここのは、緑豆、ジャックフルーツ、タペ(芋の醗酵食品)の3種が1つの器に入って贅沢。あっさりして、何個でも食べられそう。

他にも米で作ったお菓子、ココナッツ・ジュースの「エス・クラパ・ムダ」、ラワールやベトゥトゥなどといった定番バリ料理から、珍しいタニシの串焼きまで、バリの各地方の郷土料理が堪能できます。

昼の公演会場
女性陣、可愛い!

女性陣、可愛い!

中央の人物が主役。化粧を近くで見てみたい

中央の人物が主役。化粧を近くで見てみたい

お腹いっぱいになった所で、人が群がりはじめた公演会場へ、そそくさと直行。ちょうどやっていたのは「ジャンゲール」、男女の集団が歌いながら踊る歌舞劇でした。
この公演ではノーマルな「ジャンゲール」でなく、お笑いをふんだんに取り入れたドタバタ劇にまとめてありました。「ジャンゲール」というと、村の青年団が余興で行う、素人さんのソシアル・ダンスというイメージがあるのだけれど、今回、男性も女性も本物の踊り子だったらしく、踊りの基本型であるアガムがバッチリ決まっていて、歌も台詞も上手~。
ショッピング・ゾーン III
会場内の店舗や屋台群をザット見て回ろうにも、とにかく数が多すぎる。場所もあちこち分かれていて、駆け足で回らないと全部制覇は不可能な感じ。
金製品、宝石、高級絣の布を売る店が集まるクシラルナワ・ホール1階。ここはエアコンが強めに効いており、涼むにはもってこい。どこの世でも女性って宝石に弱いもの?「そんな大金持って歩くか?」という現金の束でお支払い中のご婦人がいて、仰天。

ちょっと休憩
さてさて、賑やかな場所ばかりではありません。アート・センターの隅、喧噪から少し離れた場所には寺院が建ち、神聖な雰囲気が漂っています。PKBで公演を行う楽団や踊り子は、この寺院で芸能の神様に対して祈るので、今朝供えたばかりらしいお供え物が大量に置かれています。suecaも本番前は必ずここへ足を運び、柄にもなく神妙になって舞台の成功をお祈りします。

寺院の脇には小さな公園もあるので、ボ~ケ~ッと座って、ひと休み。静けさを求めるには絶好のポイントなのでしょう、お昼寝を開始するダガン(=売り子)の姿もちらほら…午前中の公演が終わると夕方まで公演がない日もあり、昼過ぎは客足が減るため、この時間は、夕方からの商売に向けてダガンたちも休養です。
これは木陰でお昼寝の図だけど

これは木陰でお昼寝の図だけど

こっちは「倒れてませんか?」と心配になる図

こっちは「倒れてませんか?」と心配になる図

ショッピング・ゾーン IIII
さて、体力も復活したところで、日曜雑貨や衣類を売るテントが集まった一番巨大なゾーンを目指しましょう。屋根だけみても広そうでしょ?写真に入りきらない屋根が、この2倍強。
食べ物屋台に洋服におもちゃ、CDやバッグ、さらには遊具まで置いてあり、人が多くて前に進めないわ、通路がゴチャゴチャして迷路のようで自分の位置が判らないわ、とにかく混沌とした雰囲気が楽しい!
TVの人気キャラがプリントされた子供服や1万ルピアのチープな服の隣に、10万ルピア以上のクバヤが並ぶという、なんでもありの商品構成。今年2009年春頃、おしゃれな若い女性の間で人気があった「婆カイン・クバヤ」も、しっかり店頭を飾っていました。この手の花柄模様カイン(=布)は、90年代に老人が着用していたクバヤのイメージがあるため、勝手に婆カインと呼んでいますが、春に出回ったものよりも襟と袖のデザインが進化しており、これならキュートなリゾート・ウェアになりそう…女性の方、いかがですか?

B級マニアsuecaのアンテナ、ビンビン! 驚愕の遊具ゾーン!
さて、テント村ゾーン内には小奇麗な子供広場が用意されていますが、別の一角にもコッソリと遊具場があります。そこで「体の一部、手や頭を出すことを強く禁じる」などというオドロオドロしい看板を発見。
何が危険か?っていうと、観覧車。モーターで廻す簡単な作りの観覧車のゴンドラは、鉄格子を組み立てただけの簡素な作りで隙間だらけ。あちこちから手足が飛び出したら、確かに危なかろう…足元も鉄格子のみなので、スカート履いたら下から丸見え状態。ばぐーす!
その他、恨めしげな目線のピンク色のラクダと緑色のキリンが回る回転木馬。手作り感覚バッチリの遊覧船を飾るドナルド・ダックもどきの青い顔も強烈。インドネシアの遊具の色使いやデッサンの狂わせ方(笑)は、本当に斬新です!木馬になぜラクダ(確かに乗るけど)やキリンを採用したのかも、ぜひ作者の意図を伺いたいトコロ…

ショッピング・ゾーン V ダガンも必死
ショッピングが楽しめるのは店舗エリアだけではありません。魚や豚のサテ、茹でピーナッツ、カット・フルーツなどなど、ローカルが喜ぶ軽食の類を売るゴザを広げただけの簡易店舗が路上の至る所にあります。公演中に飲み物や食べ物を詰め込んだ大きな箱を頭に乗せ、客の視界を妨げるのも構わず、堂々と客席を横切りながらガッツな商売をするダガンもPKBの風物詩。

今年は主催者から営業許可を受けると、「PEDAGAN PKB(=PKB売り子)」の文字が入ったTシャツが渡されるようになったみたいでした。どこからともなく現れる無許可の売り子と警備員の間で毎年イタチごっこが繰り返されるのでグッド・アイディアなのでしょうが、ここはコピー天国のインドネシア。このTシャツのコピー品が会場内で売ってたりして…
日が沈む頃になると、薄闇に紛れて警備の目が届きにくくなるのか、怪しい売り子の数も増えます。白い生地に赤い袖のTシャツを着用した賢い無許可おばちゃんも居りまして、こちら、某政党の宣伝用Tシャツが、遠目には正規シャツそっくりでした。
風船おじさん

風船おじさん

紙製の風車

紙製の風車

段ボールの影絵人形

段ボールの影絵人形

毎年、子供たちの興味をそそる新しいおもちゃが登場しますが、今年の会場で目を引いたのは「キャラクター風船」子供たちが握りしめた風船があちこちに浮いている様子から、大繁盛だったようですね。

夜の公演会場
夜の公演が数か所で始まる時間帯には、仕事帰りに鑑賞に寄る人や、夕涼みも兼ねて買い物に出かけてきた家族連れなどで、またアート・センター内にお祭りらしい賑わいが戻ってきます。
こちらは、屋外で行われていた公演風景。バリ芸能の雰囲気には、やはり夜の闇が似合いますな~。ワヤン・ウォンという古典の仮面舞踊劇だと思って見ていたら、仮面を付けていない出演者も出て来て「???」。後で見たらプログラムにクレアシ(=創作)と書いてありました。
クレアシというからには、何か変わった工夫が必要だったのでしょう、舞台には影絵用の幕が置かれ、プロジェクターを使って画像を映し出し、場面によって背景を変化させていました。ところが画像内の目立つ場所に「一時停止」や「再生」の文字が思いっきり映ってるゾ…舞台のド真ん中にも邪魔なデカいマイクが置いてあって出演者が見えてないゾ、一体これは…。細かいことを気にしすぎる典型的日本人sueca、突っ込みたい気持ちがフツフツ。
しかし、芸術家なのに、そういう部分に気を遣わないのがバリらしいなぁ、と。

内容はラーマヤナ・ストーリーの劇でしたが、劇後半には、お決まりのお笑い役が登場し、やはり「笑いがなければバリ芸能ではない!」といった感じで幕を閉め、拍手を浴びていました。

一日の終わり
公演が終わると、人の波の大移動が始まります。混雑を避けるために大急ぎで駐車場へ走る人、家路につく前にお土産を求める人、出演を終えたグループも荷物の搬送に大忙し。
人気のパラド・ゴン・クビャール開催日などは、深夜12時に公演が終了することもあるので、爆睡した子供を抱えたお父さんは、もう、ぐったり。地方から来るパラド・ゴン・クビャール参加者や応援の家族は、この後2時間も3時間もバスやトラックに揺られての帰宅となります。本当にお疲れ様…それでも毎年バリ人が楽しみにして通い詰めるほど、魅力が多くて奥が深いのがPKB。さあ、明日もまた良い公演が観られますように!

以上、バリ島ナビのsuecaでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-08-13

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