バリのケチャを観に行こう!

ケチャと言えばバリ島。よその国では見られない独特のダンスは、バリでも人気のエンターテイメントです。

アパ・カバール、バリ島ナビです。
上半身裸で、腰に布を巻いた男性の集団が円陣を組んで、チャッ!チャッ!チャッ!と合唱して踊る。それが、私たちの知っているケチャ・ダンス。日本でもコマーシャルに使われたり、旅行の番組でも頻繁にお目にかかるので、わりと知名度の高いダンスです。他の地域では演じられていない、バリ島だけで観られる独自の芸能ですが、意外にも歴史は浅く、もともと島にあった宗教儀式をもとに、観光客向けにアレンジしたものだって知ってましたか?今回は、そんなケチャについて、お話します。

ケチャの起源

ケチャの名前の由来は、「チャッ!チャッ!チャッ!」というその掛け声から来ています。その声や動きからモンキー・ダンスと紹介されることも多いですが、一部にはカエルの鳴き声からインスピレーションを受けたという説もあります。
昔からバリ島では、疫病が流行したり、凶作が続いたり、村に悪いことが続いた時に、悪魔を鎮めるための儀式が行われていました。いくつか種類のある「悪魔を鎮める儀式」の中に、サンヒャンと呼ばれるものがあります。この儀式では、ガムラン楽器を使わずに、人間の声だけを使って、ガムランが奏でるのと同じようなメロディーを詠唱します。この、声を伴奏にして踊り手が踊っていたものが、ケチャの始まりと言われています。男性の詠唱だけでなく、女性の詠唱も交代で入ることもあります。
そして、この声だけの伴奏をアレンジしたのが、現在バリ島でみられるケチャ。1930年代にバリ島に住んでいたドイツ人の画家ワルター・シュピースを中心にして、舞踊劇入りの合唱という観光用にみせる形にスタイルがアレンジされたといわれており、ウブドの南東にあるブドゥル村の村民によって最初のケチャ上演がされました。折しもバリ島の第一次観光ブームと重なり、あちこちのグループが観光客向けの公演として上演し、その後、このスタイルが島中に広まり、バリ島を代表する芸能となったのでした。

この話を聞いた時、ナビはビックリしました。だって、バリ島のイメージとして定着してるし、とても完成度が高いですものね。それこそ石器時代くらいから伝わっている古い古い伝承の芸能だとばかり思っていました。
公演ステージでは、ココナツ油(最近は灯油を使います)のランプを燃やして中心に置き、男性達が車座になって座りながら、声高らかにケチャを唱え、その中央で踊り子が踊る。というのが、皆さんご存知のパターン。男性陣は、時には踊り手になったり、時には舞台装置になったりして大活躍します。
その動きは、「ケチャって見たことある?」と聞かれれば、腕を上げてチャチャチャと言ってれば、なんとなく私たちでも真似が出来てしまうくらいに、シンプルなダンス。
しかし!実際には、とても複雑なシンコペーションによって成り立っているんです。楽譜には起こせない位に適度なズレを作ってあったりして、本当に機械では真似できない人間にしかできないものなのです。ナビは、初めてケチャを観た時に、いや、聞いた時にと表現した方が正しいでしょうが、その音のウネリのすごさに、「これが人間の声だけで成り立ってるなんて!」と、鳥肌が立ちっぱなしで、興奮がおさまりませんでした。
お姫様は定番

お姫様は定番

中には巨大張りぼてを使う演出

中には巨大張りぼてを使う演出

定期公演では各グループで、内容を少しずつ変えてありますが、車座の中央で踊られるのは、主に「ラーマヤナ物語」の中のシータ姫誘拐のシーン。それ以外には、スバリ&スグリワという猿の王の物語を現代風に演じるグループや、マハーバーラタの物語を上演するグループがあります。

また、舞踊劇だけでなく、トランス・ダンスをイメージして行われるサンヒャン・ジャランやサンヒャン・ドゥダリ(それぞれ、馬の張りぼてに乗った演者が火渡りをするもの。目を閉じた少女が踊る踊り)を加えたり、同じくトランスを題材にした聖剣クリスを体に突き立ててみせるクリス・ダンスをプログラムに加えているグループもあり、内容は様々です。
火渡りのサンヒャン・ジャラン

火渡りのサンヒャン・ジャラン

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有名なシータ姫の誘拐ストーリー

アヨディア王国から追放されたラーマ王子と妻のシータ姫、そしてラーマ王子の弟であるラクスマナ王子の3人が森の中を彷徨っていると、一匹の金色の鹿が目の前を横切ります。
シータ姫は珍しい金の鹿を欲しがります。ラーマ王子はラクサマナ王子に妻を護るように言い残し、鹿を捕らえようと追いかけて森の奥深くに入ります。
実はこの鹿、以前からシータ姫を狙っていた魔王ラワナが、手下を化けさせたものでした。器用に逃げ回る偽の鹿をラーマ王子は、なかなか捕まえることができません。

夫の帰りが遅いのを心配したシータ姫は、ラクスマナに森へ入るよう言いますが、護衛を仰せつかっているラクスマナは、拒否します。
シータ姫は「王の座を得るため、兄ラーマ王子の死を願っているのか?」となじります。
ラクスマナは仕方なく、姫の周囲に円陣を描き、魔法の結界を作って守り、自ら森へ入ります。
独りきりになったシータをみて大喜びの魔王ラワナですが、結界の為に近づけません。そこで、弱った老人の姿に化けた魔王ラワナは、水が欲しいと切なげに訴えます。水を汲んであげようとしたシータ姫は、結界から出てしまいます。まんまと騙すことに成功した魔王ラワナは、簡単にシータ姫を捉えて、自国アレンカへ連れ帰り、城の敷地内に幽閉するのでした。
シータ姫が消えたことを知ったラーマ王子は白い猿のハノマンに協力を願います。
空を飛べるハノマンは、あちこち探し回り、アレンカ王国の城へ入り込んでシータ姫を発見します。
自分がラーマ王子の遣いの者である事を証明するため「指輪」をシータ姫に手渡します。
姫も自分の無事を王子に知らせるため、頭に付けている金の「カンザシ」を猿のハノマンに託します。

ハノマンから報告を受けたラーマ王子は、ハノマンの率いる猿の軍団とともにアレンカ王国へ攻め入って魔王ラワナを倒し、無事にシータ姫を奪還することができたのでした。

上記のような話が舞踊劇としてランプの炎の周りで踊られます。
婆シャツ姿の女性バージョン・ケチャ

婆シャツ姿の女性バージョン・ケチャ

コンテンポラリー要素の高い創作ケチャ

コンテンポラリー要素の高い創作ケチャ


いくら録音技術が発達した今でも、ケチャの素晴らしさをスピーカーを通しては絶対に体感できません。こればかりは、バリ島の地で、熱帯の空気と闇とが創り上げる空間の中で、本物のステージに触れてもらうしかないでしょう。ケチャの本物を一番最初に聞いた時の「うわぁ!」という感動を、ぜひ皆さんにも味わって頂きたいものです。以上、ナビでした。サンパイ・ジュンパ~!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2011-09-22

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