パンチャ・アルタ「レゴン・トランス、パラダイス・ダンス」

Panca Arta"Legong Trance Paradise Dance"

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ウブドの夜を華やかに彩る若手実力派揃いの王宮お抱えの舞踊・ガムランチーム。盛りだくさんなプログラムで飽きの来ない演目が揃っています。

こんにちは、バリ島ナビです。ウブドといえば、芸能の村。ガイドブックや様々なメディアで紹介されているウブドですが、ウブドのどこで「バリ舞踊」の公演が観れるの?バリ島、ウブドに初めて来られる方はたくさん数がありすぎて、かえって迷われるかもしれません。毎日公演していて、ウブドの真ん中の便利な場所にあって、確実に観られるところといえばやはり、ウブド王宮にて行われるバリ舞踊の定期公演。ウブド王宮の定期公演、毎日やっているからといって、ほんのサワリだけをダイジェスト版にしたカルチャー・ショー的なものではございません。
このウブド王宮で定期公演を行うのは「トゥドゥン・アグン」と呼ばれる、王宮お抱えの楽団。現在、この「トゥドゥン・アグン」傘下の「サダ・ブダヤ」「パンチャ・アルタ」「ビナ・ルマジャ」「ジャヤ・スワラ」という4つの楽団により、日替わりで定期公演が行われています。毎日公演を行い、演奏も舞踊も、それだけ研鑽に磨きがかかっていて、海外公演を行うほどの実力者が揃っているウブド王宮の舞踊楽団。「ウブドのバリ舞踊」を観るならば、このウブド王宮の公演をはずすことはできないでしょう。

本日、ナビがご紹介するのは「パンチャ・アルタ」の木曜日の公演。このグループは水曜日と木曜日にウブド王宮で公演を行っていて、各曜日とも演目が違います。木曜日の公演は「レゴン・トランス:パラダイス・ダンス」というもので、タリ・ルパスと呼ばれる演目がひとつひとつ独立した踊りと、舞踊劇の組み合わせの公演です。

公演開始前

欧米からの観光客が多く、毎晩、ウブド王宮の定期公演では立ち見が出るほどの盛況ぶり、と聞いていたので、午後7時30分の公演開始時間ながら、午後6時半に会場入りしたナビ。チケット売り場となる受付には、すでに楽団のスタッフが待機。頻繁にお客さんも立ち止まっています。チケットは、この入口受付で購入してもいいし、道端で売っているチケット売り子さんから購入しても、値段は定価で一緒です。入口では解説書をもらいましょう。日本語版もあります。
会場はさすがにまだまだ空いていますが、すでに最前列の椅子に座っているお客さんも。楽器のガムランもまだ運び込んでいる最中でしたが、ナビは椅子席ではなく、舞台かぶりつきの赤い絨毯席のど真ん中の一番前に腰を落ち着けます。この席は、まさにダンサーの汗がかかりそうなほど、至近距離で踊りが観られるのです。靴のままあがり、バリ人方式でどっかり腰を下ろします。
舞台前に場を清める僧侶

舞台前に場を清める僧侶

このウブド王宮の舞台は、王家の敷地内の前庭、大きな割れ門の前が舞台となります。これは舞台用に設置されたセットではなく、その彫刻といい、建築様式といい、一見の価値ある芸術作品なので、まずそのロケーションが大変素晴らしいのです。バリ島の伝統的な方位学、つまり風水のようなものに基づいて設計された王宮なので、自然と結界が張られた様式になっていて、夜になると門の上に月が浮かび上がり、それはそれは幻想的な舞台となります。また、ガムラン奏者も踊り手も一段高い舞台ではなく、観客と同じ目線で踊る形なので、その迫力が身近に感じられ、ナビとしては、ウブドの数ある舞台の中でウブド王宮の舞台が一番いいと思っています。観客のほうが高い位置から舞台が見えるように計算して椅子が置かれているので大丈夫。また、バリの寺院での祭礼(オダラン)の時のように舞台の横や、ガムランのすぐ横にも座れるので、まさに臨場感あふれる舞台です。
期待でワクワク!

期待でワクワク!

さて、待っている間に続々と観客で席は埋まり、一番前の絨毯席もすっかり満席に。お子さんなどはこの絨毯席の方が自由に体勢も変えられるし、間近に観られるし、お勧めです。
演奏の前に奏者もお清め

演奏の前に奏者もお清め


さて、それではいよいよ、公演が始まります。

公演プログラム

楽曲(インストゥルメンタル)

時間ぴったりに、ガムラン奏者がおもむろに席に着き、各々楽器の調節などを行います。この人たちはウブドの村の普通のおじさんたちなのです。普段は商売していたり、農作業をしていたり、お寺に行っていたり、鶏を抱えて談笑していたり、そんな普通の男性陣。こうやってぴしっと揃いの衣装に身を包み、楽器を演奏していると、なんとも男前に見えるじゃないですか!
いきなり、というか、おもむろに、という感じで演奏が始まります。お客さんの中には予期せぬいきなりの大音量にびくっ!とされている方も。奏者はそれぞれあらぬ方向をぼーっとみていたり、お互いの顔を見合せながらなにかにやにやしていたり、ちゃんと太鼓との間合いを伺っていたりと、バラバラな感じで演奏をしているのですが、何故にこんなに整った見事な演奏が出来るのでしょうか。奏者は全員、まったく自分の手元を見ずに演奏していますが、手だけが別の意思を持っているように速いリズムを刻んでいます。何回見ても「お見事!」と唸ってしまう瞬間です。

レゴン・トランス

さて、この木曜日の公演の、演目名にもなっている「レゴン・トランス」。宮廷舞踊として踊られる「レゴン」とは違い、「サンヒャン」と呼ばれる一種の憑依状態で踊られる、従来は非常に呪術性の強い踊りを下敷きにしているようです。

「ケチャ&ファイヤー・ダンス」などでよく「サンヒャン・ダンス」という少女2人によって踊られる踊りがありますが、あの踊りを独立させて、舞台用に洗練させたこの演目、まずは「プマンク」と言う、白衣に身を包んだ僧侶と、「グルンガン」という、レゴンの冠を持った付き添いの女性たち、そして真っ白な衣装に身を包んだ少女二人が厳かに入場してくる場面から始まります。

僧侶が場を清め、聖なる冠「グルンガン」を清め、2人の踊り手を清め、その冠を2人の頭上に被せたときから少女たちは人間ではないものに憑依し、そして目を瞑ったまま、舞い始めます。まったく眼を閉じたまま、スルガウィという、女声の唱う声に合わせて、最初は静かに、徐々に激しく、2人は同じ動きを繰り返します。これは、2人の踊りの習熟度が高いことももちろんですが、まったく見えない状態のまま2人が同じ動きを一糸乱れず繰り返すという神秘性、つまり、人間ではないものに憑依されているからこそ出来る動き、ということを表しているのです。
聖なる冠

聖なる冠

僧侶が冠を被せます

僧侶が冠を被せます

僧侶に清めを受け

僧侶に清めを受け

少女が憑依状態に

少女が憑依状態に

説明書きによると、女神の象徴である2人の踊り手が、神々が全人類の安寧、繁栄に対し慈悲と恵みを与える物語を表現しているのだそうです。
ひときわガムランの旋律が高まった瞬間、踊り手がカッと目を見開きました。その大きな眼に吸い込まれるような感じでどきっとします。
そしてもう一段激しく舞ったあと、踊り手が急に失神。そこでまた僧侶が登場し、人間に戻った少女にティルタ(聖水)をふりかけ、最後に観客にも清めのティルタと花弁を撒き、「レゴン・トランス」は終了しました。一発目からなかなか、ぞくぞくさせる演目でした。
意識を失う踊り手

意識を失う踊り手


ジャウック

数あるトペン(仮面)舞踊の中でもよく独立して定期公演の演目に取り入れられる「トペン・ジャウック」。恐ろしげながらも、どこか滑稽な仮面のジャウック。鬼神が森の中で一人戯れる姿を踊りにしたものです。

顔に群がる虫を払いのけてみたり、フルートを吹いてみたり、クンダン(太鼓)とじゃれてみたり、自由な感情の動きを表現していて、踊り手自身の即興性がかなり求められる踊りであるため、踊り手には高度な技術と、芸術性が求められる、難しい演目です。また、先ほどのトランス・ダンスと同じく、仮面をつけているせいで、視界が非常に狭く、階段などが全く見えない状況で、舞台の上で飛び跳ねるのだから、大変です。ナビが観たジャウックは登場の時、階段を降りながら踊るのですが、また後ろへジャンプして飛び乗ったりと非常に高度な技を・・・ナビ、思わずヒヤヒヤしましたが、そこはベテランさんですね~。軽々と踊っていらっしゃいました。
かなりコミカルな要素が多いので観客受けもよく、また、ジャウックは小さな子どもと遊ぶのが大好きなので、舞台近くに座っているお子さんはちょっかいかけられる確率が高いかも!?見た目はちょっと怖いですが、冗談好きなジャウック、手を差し出されたら怖がらず握手してあげて下さいね。
子供の観客を物色中

子供の観客を物色中

子供は怖がって奥へと逃げます

子供は怖がって奥へと逃げます

握手してもらえず男泣き!

握手してもらえず男泣き!


レンチャナ・アグン・ウブド

この舞踊は、インドネシア国立芸術大学教授でタリ・クリンチ(ウサギのダンス)など数多くの踊りを創作している、バリ舞踊会を代表するチュリタ氏が、ウブドのシンボルマーク(半月・太陽・地球・龍)をイメージして作った創作舞踊です。
アルタチャンドラ(半月)と太陽は地球を守り、龍が地球を支えているというバリヒンドゥーのコスモロジーを表したシンボルを、ワヤン劇仕立てに、傘などを使ったダイナミックな振り付けで表現しています。

クビャール・トロンポン

バリ島が生んだ伝説のバリ舞踊家イ・クトゥッ・マリオ氏によって1930年代に創作されたこの「クビャール・トロンポン」。トロンポンという大きな旋律打楽器を演奏しながら踊るという、高水準な技術が必要とされるこの踊り。木曜日の「パンチャ・アルタ」ではイ・クトゥッ・マリオ氏の再来とも称され、今最も注目されている踊り手デワ・ニョマン・イラワン氏(Dewa Nyoman Irawan氏)による踊りが観られます。
このデワ・ニョマン氏、日本でも大変高い人気を誇っていて、ナビが取材したこの日も年に一度、デワ・ニョマン氏の「クビャール・トロンポン」を観にウブドの王宮に来るんです、という日本人女性がいらっしゃいました。
デワ・ニョマン氏は2002年にデンパサールで行われたバリ舞踊コンテストに初挑戦、初優勝を獲得したのを皮切りに、クビャール・ドゥドゥック、タルナ・ジャヤ、パラワキヤ、等などの演目で数多くのタイトルを獲得、2008年にインドネシア国立芸術大学を卒業したあとも様々な芸能活動で活躍中の花形ダンサーです。

女性のような可愛らしい顔立ち、繊細で優美かつ、ダイナミックでバネのある素晴らしい踊りで、多くのファンを惹きつけています。ナビが初めて見た、まだ中学生・本当に中性的だったデワ氏も今や26歳。ダンサーとして乗りに乗っている時期と言えるでしょう。
その彼が踊る「クビャール・トロンポン」、まずキパス(扇)を持っての踊りから始まり、次にバチに持ち替え、楽器を演奏しながら踊ります。演奏しながらバチをクルクルと優雅に回すのですが、片手ずつ回しながら、演奏しながら、踊りながら、表情を次々変えながら・・・と観ているだけでもその速さに目が回る思い。デワ氏は余裕で次々と場面を変えていき、貫禄すら感じさせてくれます。目の前で間近で踊るデワ氏の大きな大きな眼が赤く充血しているのまで見える迫力!デワ氏がお目当ての方は是非この最前列の絨毯席を陣取ることをお勧めします。

「ビマニュウ物語」

さて、前半のタリ・ルパスだけでも十分満足した気がしますが、まだ舞踊劇が残っています。この「ビマニュウ物語」はインドの叙事詩、マハーバーラタから題材をとった物語で、アルジュナの息子であるビマニュウ王子とシティ・スナリ姫との恋物語、魔女カリカ・死の神ドゥルガとビマニュウ王子との魔力合戦などの物語が展開されます。
見所はビマニュウ王子の「バリス」、そして後半「チャロナラン劇」に形を借りたビマニュウ王子とドゥルガ(ランダ)の戦いでしょうか。
非常に、分かりやすく、短くダイジェスト版にしてありますが、出来たら事前に解説(日本語のものあり、入口で貰えます)を読んでおくと、より一層分かりやすくて面白いと思います。
王子と姫の恋の踊り

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サテアキ王子に襲われるビマニュウ

サテアキ王子に襲われるビマニュウ

カリカの手下の魔女達

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死の神ドゥルガ

死の神ドゥルガ

ドゥルガとビマニュウの戦い

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和解するドゥルガとビマニュウ

和解するドゥルガとビマニュウ

さて、この舞踊劇が終わると、充実のこの公演も終わりです。最後は出演者が舞台に出そろって終わりの挨拶、そして観客もどっと出口へと向かうので足元に気をつけて、ゆっくり出ましょう。終演は9時なので、帰りの足の確保もお忘れなく。

ウブド王宮での定期公演は、晴れていれば通常通り王宮の前庭で開催されますが、雨天の場合は、「ワンティラン」という王宮の隣りに位置する屋根付きの屋内での公演になります。途中で雨が降ってくると、場合によっては舞台を中断し、隣りの「ワンティラン」に移動、ということもあるので、天気が心配ならば雨具を持って行かれた方がいいかもしれません。
以上、バリ島ナビでした。

記事登録日:2010-08-13

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スポット登録日:2010-08-13

利用日
女性 男性

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