プリアタン・マスターズ 「レゴン・クラッシック」

Peliatan Masters "Legong Classic"

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まだまだ現役!往年のミュージシャン達が集まって編成された楽団は、落ち着いた大人の演奏が魅力です。

こんにちは!バリ島ナビです。
激しい音の洪水であるガムラン音楽は、その演奏法が主に金属の板を木槌で叩いて音を出すため、かなりの力が必要となります。このため若い演奏者で編成されたグループが目立ちますが、そんな中にあって、このプリアタン・マスターズは、その昔「若者だった」というベテランのお爺さん(若いおじさんも数人含まれます)が集まってできた楽団。無理をせず自分たちのペースで「演奏すること」を楽しんでいる姿が、とても魅力的です。
西側ゲート

西側ゲート

正面入り口

正面入り口

公演会場のアルマ美術館には入り口が二ヶ所あります。オープン・ステージは、ハノマン通りを南下したプンゴセカン通り沿い、カフェ・アルマ脇にある西側ゲートから入るのが便利です。正面ゲートから入ると暗い館内の庭を抜けることになります。ただし、雨の際は玄関脇の展示場が臨時ステージになるので、正面ゲートの方が近くなります。

公演プログラム


楽曲 クビャール・ススン(インストゥルメンタル)
プリアタン村出身の故「イ・ワヤン・ガンドラ」氏が1966年に作曲したインストゥルメンタルです。作曲家の故ガンドラ氏は、生前にこのプリアタン・マスターズでも太鼓クンダンを演奏しておられました。

舞踊 ペンデット
歓迎の踊りが始まります。寺院で踊られていた奉納舞踊をもとに創られたペンデットですが、衣装が真っ白!最近(2009年11月)ナビが観に行ったグヌン・サリ公演でも、やはり衣装の色が往来の緑&ピンクから変更になっていました。他の楽団と変化をつけるための苦肉の策でしょうか。可愛らしい踊り子達が、シンプルな動きのペンデットを踊ります。白い衣装で揃った動きで踊られると、なんだか神聖な感じがして、ナビは好きでした。

舞踊 バリス
戦士の舞踊バリスが踊られます。男性の踊り手が、戦場へ向かう戦士の勇ましさを表現します。華奢な体型なのに、足腰が強くてガッチリとした踊り方でした。先程のペンデットもそうでしたが、この楽団では基礎がきちんとした踊り手を公演に出しているようです。目が肥えた年配奏者のリクエストに応えられるレベルの踊り手を採用しているのでしょうか。

楽曲 レゴン・ラッサム
手の位置がバドゥン・スタイル系

手の位置がバドゥン・スタイル系

レゴン登場

レゴン登場

このプリアタン・マスターズのメイン・プログラムである「レゴン・クラッシック」は、1950年代に踊られていたレゴンを再現したものです。まずは侍女役のチョンドンが入場してきますが、プリアタン・スタイルというよりも、バドゥン・スタイルの構えが多く入っていました。振り付けの方も、現在見られるものとは少し違った感じです。ということは、1950年代以降に、今のプリアタン・スタイルは確定したのでしょうか?
左が妹、右が姉

左が妹、右が姉

レゴンは顔立ちと体型が似た二人が踊るのが理想だといわれますが、この二人は姉妹で踊り方も揃っていました。お姉さんの方は、アルマ美術館で子供達に踊りを教えている先生。動きが安定した踊り手によるレゴンなので、何も考えずにボ~ッと観てしまいます。音楽に変化が起こると、レゴンの二人はラッサム王とランケサリ姫に分かれます。美しいランケサリ姫に求愛するラッサム王ですが、拒み続けられ、ラッサム王は怒ってランケサリ姫の国へ宣戦を布告します。
求愛シーン

求愛シーン

ガルーダと戦う

ガルーダと戦う

さあ、いよいよ王の出陣シーン!と思ったら、すぐにガルーダの音楽になってしまいました・・・。あれ?御客さんが少ないから今夜は途中をカット?
戦場へ向かう王の行く手を、凶兆の鳥ガルーダが阻みますが、王はガルーダを無視して、死を覚悟で前へ進んでいき、物語は終了です。

本日の観客は11人。少なかったからレゴンの途中をカットした(そういう楽団もあります)のかと思ったのですが、訊いてみると、そうではありませんでした。プリアタン・マスターズが定期公演を開始した頃は、「レゴン完全版」を売りにしていましたが、やはり1時間にも及ぶレゴンのみの公演では御客さんが観るのに大変なので、現在はタイトルを「古典レゴン」に切り替え、レゴン・ラッサムの途中にプンガワ(ダンス・パートの一種)を入れただけの形にして、上演時間が短くなった分、他の舞踊を増やしたそうです。

舞踊 クビャール・ドゥドゥック
座ったままの姿勢で踊るのが特徴のクビャール・ドゥドゥックです。女装した男性の踊り手は座ったままの姿勢で、扇子をヒラヒラさせながら音楽に合わせて踊ります。この男性もアルマ美術館で踊りを教える先生。ガムランの音楽にピタッと動きが合っていました。

舞踊 タルナ・ジャヤ
クビャールの発祥の地であるバリ島北部「シンガラジャ」で作られた踊りです。激しいクビャール舞踊が続いて、少しお爺さん達の腕も疲れ気味になってきましたが、しっかりとガムランを叩き続けます。踊り手は、その昔、バリ芸術祭(PKB)などで県代表としてタルナ・ジャヤを踊った経験もある上手な人なのですが、そのせいか踊り慣れしすぎていて、目を見開いたり、体の動きを硬くするキメの部分ではバッチリと力を入れるのですが、それ以外の部分で上手に休憩している感じが。真剣にやれば、すごい踊りが出来るだろうに・・・お爺さん達が力いっぱい叩いているのだから、手抜きは良くないでしょう。と、少し物足りませんでした。

舞踊 ジャウック・ダンス
コミカルな感じを受ける仮面舞踊で、悪魔の化身を表現します。今回はバリスの踊り手がジャウックも踊ったようですが、実はこのプリアタン・マスターズのジャウックには時々バトゥアン村の大御所「ジマット氏」が入ることがあるのです。また、演奏者でルバブ楽器を弾いているお爺さん「マドラ氏」のこともあるそうで、毎回、仮面の中の顔は誰かな??と想像しながら楽しめますね。

ジャウック・ダンスの踊り手が引っ込むと、係のおじさんが舞台脇から簡単な挨拶をします。この挨拶が終わると、「ゴーン!」という銅鑼のゴンを叩く音に合わせて舞台上の演奏者がお辞儀をし、舞台は静かに終了です。
サービス精神旺盛なお爺さん奏者がひとり、客席を握手して回ってくれました。
アルマ美術館の所有する楽器はゴン・スマランダナといって、ゴン・クビャールとプレゴンガンの両方が演奏できる形態で、激しいクビャール舞踊と静かなレゴン舞踊の両方の特徴を表現できる楽器を使っています。プリアタン・マスターズの演奏は、クビャール舞踊の時には確かに激しさが不足しますが、力加減が同程度のメンバー同士なので、強弱のタイミングの面では、息が揃ってピッタリです。しかし、なんといっても楽団の素晴らしさが発揮されるのは「レゴン」。柔らかい心地良さが求められるレゴン演奏になると、舞台が輝きます。

ガムラン・ゴン・クビャールは、激しく金属の板を叩いて大音響を出します。このため奏者は年齢を重ねていくと、体力が落ちて自分の叩いている音が弱くなるのが判るため、楽団から辞退していくことが多いそうです。しかし、ガムランを愛するお爺さん達は頑張っていますので、みなさんも、機会があれば、一度足を運んで応援してくださいね。

以上、バリ島ナビでした。

記事登録日:2010-01-25

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スポット登録日:2010-01-25

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