「バリのダリ」とも評されたアントニオ・ブランコのオリジナル美術館。ユニークで独創的な作品に巡り合えるでしょう。
こんにちは、バリ島ナビです。
ウブドに数多くある美術館ですが、主に伝統的なバリ絵画が中心に年代別、そしてスタイルごとに展示されているところがほとんどです。バリ島に縁のある外国人画家の作品も多く見られますが、その中でもちょっとユニークでひと際目立つアーティストがスペイン人画家、アントニオ・ブランコ。その個性的で奇抜な風貌や絵のスタイルが、同じくスペイン人のサルバドール・ダリとも比較され、「バリのダリ」とも呼ばれています。
アントニオ・ブランコは1911年にフィリピンで生まれ、アメリカはニューヨークでアートを学び、1952年にバリ島はシンガラジャに上陸。当時そこそこ栄えていた町だったけれども彼は興味を持たず、ウブドにやって来たんだそうです。そこでウブド王宮の王族チョコルダ氏と親交を深め、今の美術館にあたる高台のおよそ2ヘクタールもある土地を贈呈されました。
場所はウブドの大通りをチャンプアン方面へ進み、橋を渡ってすぐのところに看板が見えるので、左に入り坂をずっと上ります。入場料は一人5万ルピア。インドネシア人は3万ルピアとなっています。
受付のすぐ隣の階段を上ると、そこはきれいに整備されたお庭になっています。するとすぐにウェルカムドリンクのサービスがあってびっくり。お客さんが来ると受付から連絡するシステムになっているのでしょう。
お花もついてバリ風のデコレーションがかわいいのですが、中身はすっごく甘いアイスティだったのでほとんど飲めませんでした。お庭には鳥小屋があったり、トロピカルな鳥がいたり、ちょっとだけ動物園のような雰囲気が漂っています。スタッフがいるときは鳥と一緒に写真を取ることができるらしいのですが、残念ながら今回は誰もいなかったので鳥だけの写真となりました。もちろん無料のサービスです。
入り口には派手な龍の石彫りがあり、建物からしてかなり面白いデザインになっているので、ますます中に入るのが楽しみになります。確かに「バリのダリ」と言われるのが分かる表情ですね。額に飾ってあるのは何かの賞状でしょうか。右下に見えるサインも美術館の入り口のオブジェと同じ形です。左右平等になっている理由は紙を二つに折り、広げたときにできる模様だからそうです。さすが個性的なアーティストなだけあり、サインも凝っています。
中もすごいです!1998年に創立されたというからそこまで古くはないのですが、まるで外国のオペラハウスに来たかの錯覚を覚えるようなゴージャスな館になっています。ちなみにブランコの夢は美術館を作ること。当美術館の完成を見届けた後、翌年の99年に亡くなったとのことです。
アントニオ・ブランコの絵は伝統的なバリ絵画とはまったく違い、モチーフにはバリの踊り子を描いたものもありますが、ほとんどがヌードの人物画や油絵とのコラージュになっています。また興味深いことにヌードのモデルがバリ人の奥さん(ロンジ)だということ。昔のバリ人女性は上半身が裸ということも珍しくはなかったのですが、ブランコのモデルのように下半身もヌードになることはありえません。舞踊家として名の知られたロンジは最初はブランコの要求を断っていたそうですが、とうとう承諾してモデルをすると同時に結婚したとか。ロンジとの間にはその後4人の子供に恵まれました。
階段も螺旋階段になっていて、ヨーロッパ風です。2階部分は吹き抜けになっていて開放感がありますね。
アントニオ・ブランコの作品の特徴は手作りの額にも表れています。すべての絵画はひとつだけのオリジナルの額に飾られており、絵画がますます引き立ちます。額も含めて一つの絵画になっているのは学生時代にアートを勉強したナビにはとても興味深いです。
2階からはさらに屋上に上がる階段があり、最上階からはまるで展望台のような見晴らしが望めます。四つの角には金で模られた踊り子の像が丘から見下ろす形で立っています。さすが王族から与えられた土地なだけあって、最高のロケーションだといえるでしょう。
美術館には生前のブランコが作業場として使っていた建物が併設されているのですが、そこもまた見る価値があります。
日本の掘りごたつのようにキャンバスの下は腰掛けられるようになっていました。
ブランコには4人の子供がいるのですが、唯一の息子であるマリオ氏が跡を継いて芸術活動をしているそうです。父親からヨーロッパの芸術を学び、母親からバリの感性を受け継いだマリオ氏、インドネシア国内はもちろん、シンガポール、オーストラリア、日本、アメリカ、ヨーロッパで活躍しているとのこと。あいにく訪問時は外国出張のため不在でしたが、ラッキーならお目にかかれるかも知れません。
アントニオ・ブランコの作品は創造性に溢れており、バリ島のみならず世界でも高い評価を得ている作品がいっぱいなので、バリ絵画ではない美術館を訪れたい人はぜひ足を運んでみてください。思わず自分がウブドにいることを忘れてしまうような空間を味わえるでしょう。チャンプアンを一望できる景色も素晴らしいです。以上、バリ島ナビでした。サンパイジュンパ!