グヌン・サリ「レゴン&バロン・ダンス」

Gunung Sari "Legong & Barong Dance"

閉店・移転、情報の修正などの報告

初めてバリ芸能を海外に紹介した由緒ある楽団。使い込まれた楽器の音色は外国人でもノスタルジアが感じられます。

こんにちは!バリ島ナビです。
バリ芸能の中心プリアタン村で舞踊と音楽の指導をしていた故マンダラ翁を中心に1926年に結成された「グヌン・サリ」。インドネシアがまだオランダの植民地であった古い時代のことでした。1931年にはフランスのパリ博(国際植民地博覧会)に於いて海外で初のバリ芸能披露。この公演は聴衆の喝采を浴び、欧州のバリ島ブームの引き金となります。蜂のダンス「オレッグ」が、この楽団のアメリカ公演用に創られたことでも有名です。


公演会場になっているのは、プリアタンの中心部にある「プリ・アグン・プリアタン宮殿」。休日には近所の御老人が集まってスナム・ポチョポチョ(インドネシアの軽いエアロビ体操)で体を動かしたりする風景も見られ、ローカルに親しまれている王宮の前庭が使われます。
看板娘のユリアティと正統派美男のラーマ

看板娘のユリアティと正統派美男のラーマ

当日の公演プログラムのポスターが素敵!

当日の公演プログラムのポスターが素敵!

グヌン・サリ公演が行われる夜は、翌日学校が休みで夜更かしができるため、近所の子供たちが、プログラムの一つ「バロン・ダンス」を目当てに大勢集まってきます。観客よりも演奏者の人数が多いようなオフ・シーズンでも、夕涼みを兼ね、おしゃべりに花を咲かせに来る村人(せっかくの踊りは、あまり見てない)が次々と立ち寄るので、会場内は賑やか!という感じです。

公演プログラム

楽曲 カピ・ラジャ(インストゥルメンタル)

グヌン・サリの公演で演奏される楽曲「カピ・ラジャ」は、他の楽団で聴く曲とは少し異なります。最近、年配の演奏者たちの記憶をもとに原曲を忠実に再現したのだと教えられました。以前はポピュラー版(?)の方を演奏していましたが、今はこの古いバージョンの「カピ・ラジャ」の方が楽団員に好んで演奏されるそうです。当日集まったメンバーの顔ぶれで、どちらのバージョンを演奏するかが決められ、今回の長い曲を演奏した場合は、中盤のインストゥルメンタルはカットされることが多いとか。
プリアタンの天才奏者チョコルド氏

プリアタンの天才奏者チョコルド氏

舞踊 ペンデット(歓迎のダンス)
歓迎の踊りペンデットが踊られます。寺院内で踊られる奉納舞踊を基に振りつけられた踊りなので、キラビヤカな派手さはありませんが、オーソドックスなバリ舞踊の雰囲気を醸し出していて、グヌン・サリの楽器が持つ音色の雰囲気と非常に良く合っています。
往来のペンデットの衣装の緑と黄色の組み合わせを少し変えて、ここ数年は白とオレンジの色遣いにしているようです。
CDのカバーにもなった有名レゴン舞踊家プトゥ

CDのカバーにもなった有名レゴン舞踊家プトゥ

同じくレゴン舞踊が得意のクトゥット

同じくレゴン舞踊が得意のクトゥット


舞踊 バリス・トゥンガル(戦士の舞踊)

この日、観客の視線を釘付けにした踊りが、このバリス・トゥンガルでした。
踊ったのはアグス君で、彼のお父さんは、その昔グヌン・サリでジャウックを踊っていた伝説の人。お母さんも結婚前は長年グヌン・サリの踊り子だったというサラブレッドです。先程の歓迎の踊りにお母さんが久しぶりに登場しており、おそらく子供を引率してきて、そのまま踊っていった模様です。
普段はバンジャール・カラーから来ている子が踊っていて、こちらも上手です。最初はカラーの子だとばかり思って観ていましたが、(バリ舞踊の化粧は濃くて、誰もが同じ顔に見えます)なにやら内側から出てくる「気」が違うというか・・・上手に表現できなくてすみません、やたら背中がゾクゾクするのです。それに踊りがうますぎるので、写真を撮りながらも注意して見てみたら、おや、アグス君ではありませんか!1年くらい前、寺院祭オダランで、このアグス君がバリスを踊るのを観る機会があり「やたらと飛び跳ねている」記憶しか無かったので、今夜の別人のような、恐ろしいくらいの上達ぶりに、観に来て良かった~、とバリ島ナビ感涙。
終演後に、帰るでもなくザワザワと集まっている演奏者達に尋ねてみましたが、振り付けにオカズが多すぎてシンプルさに欠けるという意見も数名あったものの、「ワヤー(バリ語で年をとっている=熟している)」だ「年齢に釣り合わないくらい上手」などと嬉しそうに話してくれました。今後、とても楽しみな踊り手です。

舞踊 クビャール・トロンポン

トロンポンという楽器を演奏しながら踊るもので、男性によって踊られますが、「男装した女性が踊るのを真似る」という複雑な設定がなされているため、中性的にふるまう必要があり、なかなか「通常」の男性には踊れません。ちょっと女性的な男性が踊るとしっくりきますが、今夜の踊り手は高校生。顔もキレイで、体型も超スリム、クビャール舞踊にはピッタリなのですが、年齢的に「女性の真似は恥ずかしい~」という年頃なのか、妙に男っぽいクビャール・トロンポン舞踊に仕上がっていました。
横に長く並んだコブ付きのトロンポン楽器を演奏するには、座ったままで忙しく移動する必要があるのですが、この彼は手が長いので、苦労することもなく、バチさばきも軽やかに楽々と演奏をこなしていました。

舞踊 レゴン・ラッセム(宮廷舞踊)

ラッサム王にまつわるレゴン物語が踊られます。まず、王宮の女官であるチョンドン役が登場してソロで踊ります。ナビ記事トップの看板の写真で、羽を持った姿で写る女の子が、ここ数年間のグヌン・サリの定番チョンドンだったのですが、今夜の舞台では、驚くぐらい小さな女の子が登場してきました。幼稚園生くらいの子でしょうか、激しく動き回って、とても愛嬌があります。小さすぎて、オモチャの人形が動いているようで、カワイ~イ!
女官のソロ舞踊が終わると、レゴン役の2名が現れます。定番のチョンドンの子がレゴン・ラッセム王を担当していました。3人揃っての踊りが終わると、レゴンがラッセム王とランケサリ姫に分かれます。
婚約者がいるのに、ラッセム王に見染められて誘拐されてきたランケサリ姫は、度重なる求愛を拒否し続けます。怒ったラッセム王はランケサリ姫の王国に宣戦を布告、その戦闘へ向かう途中、凶兆の鳥ガルーダが現れて、ラッセム王の行く手を阻止します。ガルーダの通告を無視して、ラッセム王は戦場へ向かいます。
左の子がいつもはチョンドン

左の子がいつもはチョンドン

遠近感がわからなくなる程大きさが違います

遠近感がわからなくなる程大きさが違います


舞踊 オレッグ・タムリリンガン(カップルのダンス)

グヌン・サリ楽団が1952年にアメリカ公演ツアーを行った際、新しい踊りとして創作されたのが、このオレッグ・タムリリンガンです。タバナン出身の天才舞踊家、故マリオ氏によって創作されたこの踊りは、ハチの求愛を表現したダンスとして創られ、アメリカに持参されました。
この時に踊った初代オレッグ・タムリリンガンの踊り子は「グスティ・アユ・ラカ」女史といって、スペシャル記事でジェロマデさんが紹介されているので、そちらもご覧ください。
メスバチが楽しそうに花園を飛んでいる所へ、オスバチがやってきます。遠巻きに互いの様子をうかがっていたハチ同士ですが、恥じらいながらも少しずつ接近して、最後はめでたく仲良しになります。

舞踊劇 バロン・ダンス

バリ島ではバロンは善の象徴と言われ、反対にランダは悪の象徴に例えられます。バロン・ダンスは、この両者の戦いを劇仕立てにしたものです。しかし、物語の最後に正義のヒーローであるバロンが勝利することはありません。これは『人間の心の中に存在するのは善だけではない、必ず悪がある。どんな善人にも悪い部分が隠れているし、どんな悪人にも善い部分がある。』というバリ人の考え方から来ています。そのため、どちらかが勝つということなく、永遠に善悪の象徴が戦い続けるのです。
口の中の鈴、見えますか?

口の中の鈴、見えますか?

愉快なサル登場。サルにバナナはバリでも同じ

愉快なサル登場。サルにバナナはバリでも同じ

逃げまくる子供たち

逃げまくる子供たち

実際に寺院に奉納されるバロン・ダンスは、1時間も2時間もかけて、踊り手を替えながらバロンが延々と踊り続けますが、公演用には、どの楽団もストーリーの一部を抜粋したダイジェスト版に仕上げています。ここグヌン・サリでは、サルが登場して、バロンにちょっかいをかけます。
プログラムには「観客の一人にバナナをくれます」と書かれていたので、最前列に座ってバナナ獲得にワクワクしていたナビですが・・・バナナはサル自身が食ってた・・・もぉ~期待させるなよぉ~。入り口でこのプログラム(踊り子ユリアティの宣伝用に作ったもの)が渡されましたが、昔はきっとバナナがもらえたのでしょうね・・・内容が古いらしく、出演者として名前が載る踊り子が現在は一人も踊っていませんでした。
ランダ登場

ランダ登場

バロンとランダの終わらない戦い

バロンとランダの終わらない戦い

サルは客席に向かっては媚を売らなかったものの、見に来ていた地元っ子には大サービス!劇中で何度も舞台を降りて走り出し、子供達の方へ突進、その度に子供たちはキャーキャー喜んで逃げ回り、観客もその様子に大笑いでした。
劇の後半で悪の化身であるランダが登場し、何やら呪文のような台詞を叫びます。善のバロンと悪のランダは戦いを始めますが、決着はつかず、劇は終わりとなります。

楽曲 エンディング(インストゥルメンタル)
短いエンディングの曲を演奏してグヌン・サリ公演は終了です。
公演会場の王宮前庭、門の後ろは漆黒の闇

公演会場の王宮前庭、門の後ろは漆黒の闇

雨天時はこちら

雨天時はこちら

前回の公演取材で雨に降られたため、今回も野外会場となるグヌン・サリの取材には、少々心配をして足を運びました。会場到着後、小雨が降り始めて「おいおい、またかよ」と思ってビクビクしながら座っていましたが、なんとか持ちこたえました。雨の際は、前庭内に立つ屋根付の建物で開催されます。この会場の王宮の門は美しいのですが、王宮側との取り決めでもあるのか、門は閉めたままで使われません。踊り子も演奏者も階段脇からの入場で、舞台裏を隠すために楽器ゴン(銅鑼)の後方に黒い布が張られています。この日踊ったバリスの男の子、素晴らしい踊りを終えて颯爽と退場したら、黒布が見えなかったのか、間違って客席側に出てしまい、大慌てで裏に走った・・・というシーンがあり、とても可愛らしかったです。天才でも、やはり普通の子供と同じだわ、という親しみを覚えるようなハプニングでした。

古い歴史のあるグヌン・サリは、欧米の文献などにも載っているため、懐古主義の欧米人を中心に熱心なファンが多く、観客にリピーターが多いのも特徴です。ここ数年のウブドの定期公演の異常な増加で、プリアタン周辺の公演会場はどこも閑散としており、グヌン・サリでさえ今年2009年は観客が2人だけだった週もあるそうです。現在プリアタン村の楽団の公演は厳しい時期に入っているようですが、目先にだけ囚われて新しいことを開始しないでくれればなぁ、と思います。妙な変貌を遂げないで、楽団が持つ偉大な経歴と、プリアタン芸能の未来も見据えて、昔のままのスタイルを変えない「元祖グヌン・サリ」で居続けて欲しいと願います。

以上、バリ島ナビでした。

記事登録日:2009-12-03

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2009-12-03

利用日
女性 男性

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