永遠の踊り子にインタビュー!

バリの7人の大御所、ベストマスターダンサーによる踊りの競演のイベント、セブン・エターナル・ダイアモンドに参加されたイ・グスティ・アユ・ラカ・ラスミニさんに、バリの舞踊について、日々の踊り子さんとしての生活について、あれこれ質問をしてみました。

こんにちは、ジェロマデです。5月22日にサヌールにあるタンジュン・サリという老舗のホテルで、セブン・エターナル・ダイアモンドという、バリの7人の大御所、最も古く、最も有名で美しいベストマスターダンサーによる踊りの競演のイベントが行われました。
このイベントに参加されるイ・グスティ・アユ・ラカ・ラスミニさんに、バリの舞踊について、日々の踊り子さんとしての生活について、あれこれ質問をしてみました。(以下Jがジェロマデで、Gがラスミニさんです)
J.   踊りをはじめて踊った時はいつですか?その時のことをまだ覚えていますか?
G. 踊りを始めたのは10歳、その頃のことはまだ鮮明に覚えているわ!

J.  小さい頃から踊り子になる、そんな運命を感じていましたか?
G. そんなことは考えてもみなかった、ただいつも学校から帰るときにトンボを追いかけながらいつもの道を通っていたら、親戚でもある王宮のアグン・アジ・マントラさんが私を呼び止め、踊りをやってみないか、といつも誘うものだから、従姉妹のアノム、アグンと私で、学校帰りにアグン・アジ・マントラさんの家に寄って、踊りの真似事のようなことをするようになったの。その時はアグン・アジ・マントラさんが太鼓をたたきながら、口で踊りの音楽の音を奏でながらのお遊びのような感じだったの。
それからアグン・アジ・マントラさんが私たち3人を見込んで、踊りの先生を探して本格的な練習が始まったの。でも、最初の先生のワヤン・ロトリという先生はアノムの足がX脚であることからレゴンダンスは難しいだろうと教えるのを渋ったの、でもどうしても3人で踊りをしたかったからまた新しい先生を探してきてもらったの。その先生がグスティ・マデ・スンゴクという、私たちのレゴンの先生。この先生からはレゴンダンスをはじめとしてチャンドンダンス、ガルーダダンスなどを教えてもらった。
次の先生になったのが、クトット・マリオ先生。この先生からはオレグ・タンムリンガンというバリ舞踊で女性が初めて踊る舞踊を教えてもらうことになるの。
J. スカルノ大統領に面会されていますが、その当時のお話を伺えますか?
G. それは1952年のこと。私たちのグループであるグヌン・サリの一段がMr.ジョンコス氏から海外公演の招待を受け、総勢50名ほどの団体で、まずはバリからジャカルタへ船に乗って行ったの、そのときにジャカルタでスカルノ大統領に謁見したのよ。そして、それからアメリカをはじめヨーロッパツアーに出たの。まずはアメリカにチャーター機で飛んで、公演をしてヨーロッパへ。

J. チャーター機でアメリカへ!?凄いセレブですね~!!現在だってこのバリにそんなセレブはなかなかいないのではないでしょうか?
G. 本当にネ。私はウブドでだって、ほとんど自分の家の周りを行き来するくらいだったのに、まさかそんな遠くへ行くなんて!(そこで、当時の写真を見せていただいていると、あの、ウォルト・ディズニー氏と一緒に写っている写真が!!)

J. こ・これは、ディズニーランドを作った、あのウォルト・ディズニーですか!?
G. そうそう、その一番小さいのが私よ~。(さすがに大物である、ミッキーマウスもドナルドも全く関係ないのである)
 

J. バリ舞踊を広め海外に紹介してゆくことは不可欠ですよね、海外公演など・・・そこで、バリ舞踊の将来についてはどのようにお考えですか?
G. 私としては、やはり古典を大切に継承してゆきたいと思っています。もちろん現代風にアレンジした踊りも良いけれど、伝統の踊りは絶やしてはいけないと思うの。
J. こうしてラスミニさんとお話を伺いながら、お姿を拝見していると、70歳を超えておられるとは全然見えませんよね!昔のお話を伺っていても、昔のことではないような、常に今、全てがここに存在しているという印象を受けます。それは常にトップでいるという意識をお持ちになり、絶え間ない練習をされておられるからなのでしょうか?
G. あら~、トップだなんて!私なんてまだまだよ、ただ、オレグダンスだけは私が第一人者と言っても良いけれど、そのほかに関しては常に勉強、まだまだ練習です。
J. 沢山の踊り子さんのなかでも若い頃は素晴らしいスタイルをしていても、年齢を重ねるごとに、やはり自然の摂理には抵抗することが難しく、スタイルを崩される方も多いかと思いますが、なぜ、ラスミニさんは常に素晴らしいスタイルをキープされておられるのですか?沢山の日本女性がバリ舞踊を習うのは、踊り子さんのようなナイスなボディに憧れるからです。その秘訣を是非お聞かせ下さい。
G. 何にもしてないわよ~!!私はダイエットなんてしたことがないし、食べたい時に食べたい物を何でも食べるの。みんなジャムー(インドネシアに伝統的に伝わる民間療法で健康維持のための飲み物や、外用薬などがある。)を常用しているみたいだけど、私は飲んだことなんてないわ。あ、何度かは勧められてのんでみたこともあるけど、自分から飲もうなんてあんまり思わないの。ただコーヒーとタバコはいただきません。でも集会なんかでコーヒーを出されて皆が美味しそうに飲んでいると、私も一口二口はいただいちゃうの。基本的にはお水を良く飲みます。

J. 髪の毛もお肌もつやつやですが、何のコスメティックをお使いなのでしょうか?
G. あら~、本当に、な~んにもしていないのよ~!顔は時どきお風呂で身体と一緒に石鹸で洗ってしまうし、髪の毛も、シャンプーなんてほとんど使わないで、アイル・ムランで洗うくらいなの。(アイル・ムランとは稲の穂の皮を焼いたものを水に浸した水、バリでは昔から伝統的にこの水を頭髪の洗浄に使用している)化粧水やクリームを使うのは最近のことよ、それもたま~にね。

J. 毎朝何時に起床されますか?
G. 必要とあらば、朝4時でも5時でも起きられるわよ、でもね、普通は朝の7時くらいに起きるかしら。

J. 毎日必ず踊りの練習はするのですか?その時間帯はいつですか?
G. 練習は毎日するわ、しないと身体のあちこちが痛くなってしまうの。ただ私はアルマ・ミュージアムで毎週3回、日曜日の午前10時からと、月曜日と水曜日の午後3時から、子供たちに踊りを指導しているので、それ以外の時間帯にひとりで練習をするの。私は夕方に練習をするのが心地よいわ。

J. ウブドでは女の子は小さい頃から集会場や王宮などで踊りを習っていますね、ただ沢山の少女の中で、教えている時に目に付くもの、目を引く光るものを持った子供を見抜くのは何からですか?
G.もちろん今はテストをしたりしますからね、アルマ・ミュージアムでは毎年3クラス毎にテストをするし、半年に一度予備試験のようなこともしているの。ただ一番見るのは、脚ね。脚の形が良くて、立ち方がまっすぐかどうか、動いている時の脚の位置などね。脚がダメだと全部ダメだから。

J. 顔が綺麗とかかわいい、というのは重要なポイントではないのですか?
G. それはいいに越したことはないけれど、それで脚が斜めに曲がっていたりしたらダメなのよ。顔より、やはりまずは脚に目がいくわね。

J. では、踊る立場ではいかがでしょう、例えばお寺で奉納する踊りを踊られるときと、ステージで大衆の前で踊られるときでは、双方に何か違いはあるのでしょうか?
G. 今はね、どちらも同じ。どちらでも同じように踊りに集中しているけれど、始めたばかりのころはもう、ドキドキしたものよ。

J. それはお寺で踊るときですか?
G. ステージのほうよ!もう、沢山のお客さんがいると思うとドキドキしたわ。お寺での踊りは神様に捧げるのだから、気持ちよく思う存分に踊れるのよ。

J. ステージで踊られている時に、バリ舞踊は目力というか、視線に強い威力があります、観客としては自分の目を見つめられていると感じる人も多いと思いますが、実際、踊られている時に観客の目をみているのですか?
G. もちろん、ひとりひとり、どんな方がいらっしゃっているのか見ますよ。

J. 例えば、観客の方がもの凄く感動している様子だったり、または退屈している様子などを目にした場合、実際踊られているときに影響を受けたりされますか?
G. それは大いにあります。お客様からのパワーというのは常に受けています。
J. 娘さんも踊り子さんですが、母として娘さんを教える時、何か違いはありますか?
G. 娘が踊り子になったことはとても嬉しいと思っているの。けれど、娘が小さい頃、お母さんは、きつい、厳しい、と嫌がられたものなの。私としても、娘は言うことを聞かないし、すぐにあちこちが痛いと言い出して、お互いに強い要求と甘えがあって難しいのね。だから娘には別の先生に指導していただいたの。
(ラスミニさんの娘さんのアグン・ビアン・ティックさんも踊り子であり、踊りの指導もしている)
J. 元々、踊り子さんの家系なのですか?
G. いいえ、私の祖父に踊り子がいたと聞くけれど、代々続く家系というわけではないの。
J. 最後にお聞きします、これまで踊り子さんとしてバリ舞踏会に君臨され、現在も尚、現役として活躍されておられますが、やはり運命的なものを感じられますか?
G. そうね、全ては神様から与えられたもの、感謝してそれを受け取り、精一杯それをエンジョイするだけね。

J. 今日は本当にありがとうございました!
インタビューの際にもフランスから尋ねて来られたお客様がいらっしゃり、この後にも他のインタビューをお受けになられると、とても多忙なラスミニさん。70歳とは思えぬ美貌とスタイル、有名になられても傲慢にならず常に謙虚でおられる。4月19日にはキャニャール市で行われる芸術祭に参加されるそうで、その練習や準備に大忙し。それが終わるとラスミニさんの居住されている地域で葬儀が行われるので、お手伝いにまた忙しい。その合間に多くの生徒さんに踊りを指導されて・・・。やはり輝いている人の周りには常に人が集まるのですね。

実際お会いすると、とても細くて小さなラスミニさんなのに、その強い存在感と、輝くオーラを強烈に放っている感じがビンビン伝わってきました。こんなに魅力的で素敵なセレブにお会いできるのもこの小さな島、バリ島ならではです。感謝!

以上、ジェロマデでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-07-24

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