バリのお供え物~チャナンについて

バリのいたるところで見かけるお供え物の話

はじめまして!バリ島に住む、プスパ、といいます。

みなさんは、バリに来られた事はありますか?一回、行ったことがある。いやいや、私はバリ好きで、年に二回以上は渡バリするヘビーリピーター!テレビや雑誌で見るだけで、行ったことはないが、一度は行ってみたいと思っている。・・・・・様々なバリに興味のある人がこのサイトをご覧になると思いますが、かくいうプスパは、12年ほど前からバリ島にはまり、はまりにはまって、とうとうバリ人と結婚して住みついてしまいました!

バリ人と結婚するということは、バリ人と同じ、バリ・ヒンドゥー教徒に改宗して、バリ人と同じように、毎日お供え物三昧、お祈り三昧、お祭り三昧の暮らしに入る、ということで、プスパ、毎日バリ人になるべく、奮闘中であります。
空からバリ島に降りたって、まず目にするものは、といえば、空港のあちこちに置かれている、「チャナン」ではないでしょうか。
この島に何日か滞在していると、それこそ、町じゅういたるところに供えられた、このチャナンを目にします。この、チャナンの置かれた風景が、バリをバリたらしめていると言っても過言ではないでしょう。椰子の葉で編まれた小さなお皿の中に、色とりどりの花・花・花。毎日つみたてのフレッシュな花々を、ふんだんに盛って、バリの女性達は、朝に夕に、この小さなすてきな供物を、神々に捧げます。
そう、バリ・ヒンドゥー教の世界では、神々はいたるところに宿っており、家寺の中の各祠はもちろんのこと、各建物、台所、米倉、井戸、排水溝、門、車やバイクや自転車などの乗り物、ほんとうに、あるものすべてにお供え物をするのです!地面には「悪霊」という名の「神様」がおり、悪さをしないでくださいね、という願いをこめて、お供え物を置きます。お商売をしていれば、もちろん商売繁盛の願いを込め、仕事に使う部屋、道具にいたるまで、お供え物をそなえます。
さて、このチャナン、朝・夕に、市場や道ばたで売られているのをよく目にしますが、ふつうは各家庭で作ります。細長い椰子の葉を使うのですが、この椰子の葉を何枚か重ねて、ナイフ(はさみではないのです!)を使ってザクザクと切り、小さな四角い・もしくは三角形のお皿を作ります。
バリ人の女性は、小学校低学年くらいから、この小さなナイフを使って、お供え物を作りはじめるのですが、重ねるとかなりの厚みになるものを、それは器用に、てばやく切っていきます。プスパなどは、とてもこのナイフさばきは習得できず、一枚ずつ、おそるおそる切るものだから、時間がかかって、切り終ったころには、葉のはしの方が茶色く変色しているしまつ!だから、もっぱら切るのは、人にお任せしちゃいます!
お皿の枠ができたら、つぎに、バナナの葉などで、底を作ります。

お供え物は、全て天然の素材で作られます。いれもの、飾り、すべて椰子の葉・バナナの葉、など、100%天然。それを縫い合わせる、糸の代わりには、竹ひごを使います。なので、そのままゴミとなっても、すべて安全に、土に帰っていくのですね。自然のめぐみを最大限に活用して生活しているバリの人々は、その自然を汚染しないように、大昔からエコロジー生活を営んできたのですね。スゴイ!

いれものになるお皿が完成したら、つぎにいよいよ盛り付け(?)です!まずお皿の中央に、ポロサンという、「上・下、天・地」を決めるものを置きます。そして、お花・花びらを見た目もうつくしく、盛り付けていくのですが、よく使われるお花の色は、白・黄色・赤。そのほかにも、アジサイの青や、小さなバラの花びら(ピンク、紫、赤など)などをふんだんに使います。この、チャナンに使われる色は、バリ・ヒンドゥー教の、基本方位図に対応しているようです。
お花は、たいてい、家のお庭にある木の花を使います。南国の花の定番、香りよし、みた目よし、の白いフランジパニ。鮮やかな赤・紫・オレンジ色のブーゲンビリヤ、大輪の真っ赤なハイビスカス、そのほか、鮮やかな黄色のマリーゴールド、香り高いチュンパカ、くちなし、などの花々。
なにしろ、ほぼ赤道直下の南国・島国。年中、花は咲き乱れています。ほとんどのバリの一般家庭には、庭にこれらの木を植えてあり、人々は毎日、花をつんでは、お供えしたり、お祈りに使ったりするのです。なんと豊かな島なのでしょうね。
チャナンを置く位置ひとつとってもそうですが、バリでは、方角など、ものや人の「向き」がとても重要です。
わかりやすく日本的にいえば、「人に足を向けない」というようなことで、お供え物にも「向き」があって、神様の場所、神聖な方向に、ものの「お尻」にあたる部分を向けて置くのはタブーなのですね。神様に供えるものは、もちろんすべて、神聖な、清められたものでなくてはいけません。
人間のからだで言うと、「頭」は一番上にあって、神聖な部分。お尻、足などは地面に近い、不浄な部分。生活の基本はすべてにおいて、「浄・不浄」です。だから、お祈りやお供え物に使うお花も、あやまって下に落としてしまったものは、もう使いません。それは地面に落ちてしまって、「浄」なものではなくなってしまったからです。
この感覚は、ちょっと日本人の「きれい・きたない」という衛生観念とは違っていて、プスパも、結婚した当初は戸惑ったものです。たとえば、バリ人の一般家庭で、おトイレや台所を覗いて、ギョッとしたことはありませんか??日本人の感覚でいうと、「げっ!きたない!!」って思っちゃうほどの、まあ、あんまり清潔な状態じゃないことが多いのです。そちらのほうを熱心に磨き上げることは、あまり重要ではないようです。でも、寝るときの頭の向き(頭は東か北向き)とか、洗濯物の干し方(下半身につける下着やズボン・スカートなどは下のほうに干す。間違っても目の高さには吊るさない、入り口や、人の通るところには干さない)、お供え物グッズの保管の仕方、などは、「そこまでする!?」っていうくらい、神経質に、いろいろとうるさいのです!ところかわれば、いままで「ふつう」と思っていた感覚も、またかわってくるのですね。

もうひとつ、とまどったのが、こんなに手間ひまかけて作って、供えたチャナンも、いちどお供えしてしまえば、あとはゴミとなる、ということです。よく、旅行者からも、「あれはすぐ捨ててしまうのですか?もったいない!」と言われます。たしかに、きれいに細工されたチャナンなどは、まだ花もみずみずしく、見た目がうつくしければ、そのままゴミにするのは、おしい!という気になりますよね。でも、チャナンの第一目的は、自然に宿る、あらゆる存在の神々に捧げることなので、お供えしてしまえば、あとは用済み、なんですね。だから、地面に置かれたチャナンを思わず踏んずけてしまっても、大丈夫、あわてることはないのです!でも、ゴミとなってもわたしたちの目を楽しませてくれるチャナン、本当に、すてきなお供え物ですよね。
このようにして、バリの女性達は、ほぼ毎日、チャナンを作る手を休めません。家事や仕事の合間を縫って、テレビを見ながら、お喋りをしながら、手はいつも動いています。そして、朝はやくに家中を清め、咲きたてのお花を集め、チャナンを作り、供え、祈ります。
旅行でバリ島に来られたみなさんも、レストランやホテルで、かわいらしいチャナンを目にすると思います。それらは、お客様の目を楽しませるものである前に、バリの人々の自然の神々・いまここにあるものへ、の感謝と祈りが込められたお供え物です。ただのお花のデコレーションとしてではなく、このチャナンが捧げられた数だけ、ここには精霊や神々があるんだ、と思って見ると、なんだか自分の存在そのものが、祝福されたような気分になってきませんか?

神様を喜ばせるとともに、それを見る者をも喜ばせるお供え物。そしてそのお供え物に供給される、すごい量の花々。毎日、とぎれることなく繰り返されるこのお供え物を見るたびに、プスパは、このバリ島の自然の豊かさに、驚きと感謝の念をいだくのです。

以上プスパでした。
関連タグ:チャナンお供え物

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記事登録日:2009-04-03

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