バリ島のお祭り「オダラン」

バリ島に来たなら必ず一度は目にするバリ島固有の宗教行事「オダラン」についてご紹介します!

こんにちは、プスパです。

今日は、バリ島に来たなら、かならず一度は目にする、バリ島固有の宗教行事、「オダラン」についてご紹介します!

オダランとは、日本語で言うと、「お祭り」という意味でしょうか。インドネシアの中でもバリ島は、「プラウ・デワタ、神々の島」と呼ばれるほど、バリ・ヒンドゥー教の宗教行事が多いところで、各家庭の家寺も入れると、お寺の数が、人口の数に匹敵するのではあるまいか、と言われるほどなんです!すごいですよね~。
 
その数多くのお寺の創立記念祭が、オダランなのです。この創立記念祭は、バリ島の暦で一年に一回、西暦に直すと、およそ7ヶ月に一回、の割合で行われます。

バリ島は、インドネシアという国の中のひとつの州、「バリ州」です。そして、バリ州の中に、県があり、市があり、村があり、最小単位である「バンジャール」と呼ばれる集落があります。その集落には、3つの重要なお寺があり、プラ・デサ(集落の共同体の寺院)、プラ・プセ(集落が生まれるもととなった、「へそ」という意味の寺院)、プラ・ダラム(死と火葬の神々を祀る、墓地の横に立つ寺院)と呼ばれています。その他にも、お米の島バリ島には、各バンジャールに必ずある農業組合のお寺、プラ・ブドゥグル(稲作の神の寺)や、山の寺、海岸の海の寺、市場の寺、水浴寺院、湖・洞穴・泉の寺院などなど、数え切れない数のお寺があります。

その膨大な数のお寺すべてに創立記念祭「オダラン」があり、これは村全体の大事な行事で、村中全員参加で、大きなお祭りを開催するのです。
さて、そのオダランがはじまる、何日か前からは、村の男性、女性は「ngayah」(ガヤー)と呼ばれる、共同体の奉仕活動に従事します。朝8時から夕方4時ごろまで、男性はおもに、寺院の飾りつけ、仮祭壇の設置、祝宴用の料理などを担当し、女性はそのオダランで使われる、莫大な量の供物の準備に追われます。

この、「ngayah」奉仕活動は、結構きびしくて、参加者の出席をとるのはもちろん、無断欠席の場合は、罰金を科せられたりもして、バンジャールの各構成家庭から一人は、絶対参加なんですよね。よく「バリ人は宗教行事に忙しくて、仕事をしている暇がない」などと言われますが、バリ人の家庭に暮らしていると、それが実感を伴ってきます。

さて、そんな大変な準備を経て行われるオダラン、当日はきらびやかで、華やかで、みんな思いっきり着飾ってお寺に供物を持って参拝しに行きます。この華やいだ雰囲気は、何度味わってもワクワクするもので、プスパは結婚する前はよく、ものすごーく遠くのオダランを見に、あちこち行ったものです
今回は、グヌン・ルバッという、バリ島はウブド、チャンプアンというところにあるお寺のオダランに参加しました。

このお寺は、いくつかのバンジャールで構成されるウブド地区が管理するお寺で、多くの参拝客が訪れます。「UBUD」ウブド、という地名の発祥の地、とも言われる、古い由緒あるお寺でもあります。
まず、オダラン本番の前日、このグヌン・ルバッ寺院に関係のある、近隣のバンジャールのお寺から、ご神体が運び出されます。オダランの期間中、グヌン・ルバッ寺院に安置されるためです。このご神体をお送りするために、村人総出で長い行列を作り、グヌン・ルバッ寺院まで歩いていくのです。
このような行列、バリ島に来たことのある人なら、一度は遭遇したことがあるのではないでしょうか?この行列の通る最中は、いかなる車両も通行止めになります。警察も出動して、行列を保護します。大きな行列になると、大渋滞を引き起こしますが、これはバリ島では最優先事項なので、もし、この行列に遭ってしまったら、しばしエンジンを止めて待ってくださいね。決してエンジンをわざとふかしたり、舌打ちしたりなぞなさらないように。

この、ご神体をお運びする行列のことを「ngiring」(日本語では発音不可能・・・)といいます。夕方、そろそろ支度してください、という合図の「クルクル」と呼ばれる竹の半鐘が村中に鳴り響きます。まず地元のお寺で、清めの儀式やお祈りを済ませ、三々五々集まってくる村中の人々が揃うのを待ちます。

そしていよいよ出発。
旗やのぼりや槍を持った大勢の男性たちを先導に、着飾った女性たちが頭に供物を捧げ、続いてご神体であるランダ(伝説の魔女の仮面)とバロン(聖獣の獅子の仮面)などが高く掲げられて厳かに続きます。
そのあとには、バラガンジュールと呼ばれる楽団が、銅鑼や太鼓やシンバルを激しく打ち鳴らしながら行進のリズムを鳴らし続けます。そして、大人も子供も赤ちゃんも、村中の人々が後ろについて行列は進みます。
バリ人はこのような宗教行事に、赤ん坊のころから参加します。この行列にも、よちよち歩きを始めたばかりの小さな子達が、お人形の服のような、かわいい民族衣装で正装して、一生懸命に後をついていきました。それでも全行程を歩きとおせるものではなく、小さい子供を持つ親たち、祖父母たちは、子供を抱きかかえてひーひー言いながら、歩くのです。
このngiringは、徒歩でなければなりません。ご神体を差し置いて車やバイクで行くことは許されません。でも、ご神体をお送りしてしまった帰りは、誰かに迎えに来てもらったりして帰っても大丈夫。プスパも、子供がまだ小さいうちは、せっかく着飾って、お化粧もばっちりして、ヒールの高いサンダルを履いていっても、結局は、足が痛い!だの、眠い!だのぐずる子供を抱きかかえて歩くはめになって、いつも汗だくで死にそうになっていました。ちなみに、プスパ、今までで最高に長距離の行列ngiringは、14キロの行程でした。最後のほうは裸足で歩き、翌日はすごい筋肉痛になったのを覚えています!

さて、グヌン・ルバッ寺院に着くと、そこには、各バンジャールからご神体をお運びしてきた人々でごった返しています。とにもかくにも、ご神体を境内までお送りして、今日は終わりです。このグヌン・ルバッ寺院は、道路より低い位置に流れる二つの川の合流地点にあり、かなり勾配のきつい坂道と、階段を通って境内に到ります。すでにあたりは暗くなり、ライトの中に浮かび上がる、きらびやかに飾られたお寺の美しいこと!
そこに、バリ人が一番美しく見える正装で、上から下までばっちりきめた人々が、大勢行き来しています。
今回のこのオダランは三日間続きます。プスパも、ngirigの翌々日、お供え物を持って参拝しました。お供え物を持ってお寺に着くと、そこにはすでにたくさんの参拝客が。きらびやかな衣装に身を包んだ女性達が、頭の上に、お供え物を載せて歩いています。バリの女性達は、両手を離してこのお供え物を持っていけるようになると一人前で、プスパなどはいつまでたっても半人前なのですね。重いものだと重量10キロくらいあるんですもの・・・。
まず最初に、家から持ってきた供物を、奥境内に奉納しに行き、お祈りをします。すでに祈祷待ちの人々で、奥境内は満員です。
供物に対する祈祷が終り、いよいよお祈りです。人々は香に火を点し、背筋をしゃんと伸ばして正座しなおし、深く息を吸い、瞑想状態に入ります。そして、手の指先に花を持ち、頭上高く捧げて、この場に降臨している神々、そしてもっと高い次元の存在に、祈りをささげます。祈りが終ったあと、お坊さんから聖水をいただいて、頭から清めていただき、口に含み、その後「ビジョ」と呼ばれる米粒をいただき、額とこめかみ、喉元にそれをつけて終了です。あとは、持ってきた供物のお下がりをまた持ち帰ります。
この世界中で、このような美しいお祈りをする人たちが居るでしょうか。自然の神から恵まれた、色とりどりの香り高い花々を、更に美しく整えて、それを自分の一番高いところに捧げて、祈るのです。空に向かって立ち昇る、お坊さんが鳴らす鈴の音と、香の香りが、人々の祈りを運んでいきます。その瞬間は、ざわめいているはずの周りの物音が無音になり、ぴーんと澄み切った空気が支配します。プスパが、こんなにバリ島にはまったのは、ひとつには、この人々が祈る姿を見てしまったからかもしれません。
とは言え、小さな子供を連れてお祈りをする場合は、こんな優雅な感じではありません!まず子供は火のついた線香を触りたがる!お祈り用のきれいなお花をむしって下に置いたり、すでに使用済みのものをまた盆に載せたり、忙しいことこの上ない!瞑目している間に、とんでもないことになってしまう恐れがあるので、母親や父親は、膝の上の子供の手を押さえながら、微妙に薄目をあけて、たえず子供の動向を注意しています。でも、周りの人たちは、おかしそうににこにこ笑って見ています。小さいうちからどんどん、行事に参加させ、こういう状況に慣れさせていくのです。日本のように、小さい子供が居れないような場所は、このバリ島には、どこにもありません。
オダラン本番では、毎日、各バンジャールからガムランの楽団や、舞踊団が、演奏や舞踊を奉納しに来ます。これは、純粋にオダランに対する奉納演奏・奉納舞踊ですが、参拝を済ませた多くの人々が、足を止めて楽しんでいます。時々、いっせいにあちらこちらから演奏や演目が始まったりしますが、これはつまり、神様に奉納することを第一目的としている訳で、人間の鑑賞者を対象にしていないからでしょう。
この日も多くの楽団が、奉納に来ていました。あでやかな衣装を身に着けて、出番を待っている少女達の美しいこと。まだ小学生や中学生くらいなのに、ぞくっとするほど色っぽく見えます。
このグヌン・ルバッ寺院は、ウブドのお寺の中でも、ガイドブックに載っているほどのお寺なので、外国人観光客の姿も多く見られました。みな、一様に、美しい少女達の舞いに見入っています。プスパも、結婚前にオダランにはまっていた頃、自分の好きな楽団や、踊り子さんの奉納演舞を目当てに、あちこちのお寺のオダランに行ったものです。
さて、参拝も済ませ、踊りも見たし、そろそろ失礼しよう、と帰り道。参道の一角に、日本人にも懐かしい、夜店のような屋台や出店が並んでいる一角が。人ごみに疲れた人々が何か飲んだり、軽い食事をしたり、子供達がおもちゃの出店に群がっていたり、ここも結構混雑しています。プスパも夜食用に、魚と豚肉のサテ(甘辛い味の串焼き)をテイクアウトしました。
このようにオダランは、村中総出の、おおがかりな大イベントなのですが、小さいものは家寺の創立際(これには親戚一同総出で行われます)、前出の各バンジャールの三つの重要な寺院のオダラン、近隣の大きなお寺のオダラン、その他関連寺院のオダラン、と、かなりの頻度で、どこかで行われており、思えば、むかしむかし、娯楽の少なかったであろうバリの人々にとっては、大きな楽しみでもあったのじゃないか、と思います。子供はまず、オダランに行くのを喜びますし、大人だって、普段はほとんどしないオシャレを、ここぞとばかりにして「お出かけ」するのですから。

オダランが終った翌日は、またご神体をお迎えに行くngiring行列があり、今度はグヌン・ルバッ寺院から地元のお寺まで、歩きます。そうしてご神体を、元の寺院にお戻しして、このオダランは終了となります。
オダランは、観光客でも見学(もちろん参拝も)OKです。ただし、必ずバリの正装をするか、最低でも肩を出さない上着に、足を隠すサロン(腰布)、スレンダン(腰帯)を着用してください。これらを着用していないと、おそらく入場を禁止されるでしょう。
でも、人々の美しいお祈り姿や、素晴らしいガムランの演奏やバリ舞踊を見て、ちょっとお花とお線香を持ってお祈りし、清々しい気分になって、帰りに屋台をひやかす、そんな体験は、きっとバリ島での素晴らしい思い出になると思います。もし、バリ島滞在中にどこかでオダランに遭遇したら、ぜひぜひ、参加してみてくださいね!

以上プスパでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2009-04-03

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