バリ島選挙面白ポスター

日本ではありえない、おもしろポスター勢ぞろい!

インドネシアでは2009年4月9日に国会議員、地方代表議会、州議会、市/県議会の各議員を選出する総選挙が、また、7月8日に大統領選挙(5割以上を得票する候補がいない場合は決選投票を9月8日に実施予定)が実施されます。インドネシア全州で3月17日より選挙運動が本格化し、選挙運動の期間中及び選挙結果の公表が投票日より1か月後に発表されます。

バリ島では、4月9日に議会選挙(国会及び地方議会議員)が予定されていて、現在、各候補者は候補者ポスターを路上に掲載し、戸別訪問等を実施しています。3月16日から4月5日は路上等での選挙キャンペーンが解禁されます。選挙キャンペーンを前に、日々新たなポスターが掲げられ、民間人の選挙への興味を駆り立てるべく、趣向を凝らした(?)候補者のポスターが路上を賑わせています。
政治といえば金まみれ、というのは全世界共通なのかインドネシアはもちろんのこと、バリも例外ではなく、立候補しようと思う立場にあるというだけで、既に金まみれの状況下にいることは間違いないのです。

立候補するだけでも、10ジュタルピア(約10万円)から200ジュタ(約200万円)くらいの選挙資金がなければ立候補さえできないそうで、しかも運良く選出されれば一ヶ月の給料が50ジュタルピア(約50万円。一般のバリ人の一ヶ月の平均給与は約5千円から1万円)くらいは貰えるそうで、いろいろな賄賂も受け取り、益々金まみれ街道まっしぐらなのです。

選挙といえばこんな金にまつわる噂が実しやかに民間人の間で囁かれるくらいで、既に誰も選挙には期待など寄せては居ません。選挙で誰かを選び、その人を信頼し期待して、それにより世の中が良くなる。この方程式は過去の理想でしかなく、そんなカリスマを持った人物など現在、存在しないのです。バリで選挙といえば、選挙キャンペーンで村の王様がヘリコプターで上空を飛び廻るのを子供達が大喜びで手を振る。そんなものでしかありません。
では、なにを基準に投票をするのでしょう?一般のバリ人の基準はどこにあるのでしょうか?そこでジェロマデは一番身近なバリ人である旦那に聞いてみました。すると彼は選挙ポスターを観てまず、その人が知っている人かどうか、というのが判断基準としての第一段階である、というのです。

この回答はかなり意外でした。選挙立候補者など知らない人が当たり前だと思っていたジェロマデにとっては。そういえば確かに、選挙ポスターの中には知っている人の顔もいくつかあるのです。子供の同級生のお母さんだったり、村の王族の人だったり、寺で見かけたおじさんだったり・・・。
小さい島、バリ島はやはり狭い。非常に密接な人間関係で成り立っているのだということを改めて思い起こさせるのでした。次に来る重要な基準といえばその人物がバリ人であるか否かでしょう。知らない人であれ、その人がバリ人であれば、まずはクリア、最初からなんの期待もしていないのですから、イスラム教徒であるなんてもってのほかなのではないでしょうか・・・。だから、バリにイスラム教徒を思わせる帽子や布を頭に巻きつけている写真でポスターを掲載するのはかなり勇気がある、というか全く向こう見ずな感じがしてしまいます。
バリで目に付く選挙ポスターは、バリの正装を身に付けた写真のものが殆どです。
そのバリ正装のポスターに付き物の文句が「Mohon Doa Restu」です。このインドネシア語の意味は、「どうぞ私のために祈ってください。」そんな感じです。国民のためにわが身を捧げるべく働くという意志ははじめから無いのです。国民から税金を搾り取って私服を肥やすという気持ちが最初からあふれ出しているのがこの言葉からもよく読みとることができます。まずは皆様の幸福のために私は祈ります、ではなく皆さんが私の幸福を祈ってください、と。なんと厚かましいことでしょうか・・・。

バリの白い正装に身を包み、清いイメージを強調し、更にバリ語で標語を掲げれば、よりバリ人から好評を得られる、というものでもないようです。あまりにもかしこまった丁寧語のバリ語だと、意味不明、読めても意味がわからないということにもなりかねないのです。
あまりに行過ぎた印象を与えてしまうのもどうかという気がします。なにも自分の写真をふたつも掲載することはないでしょうし、これでは使用前、使用後のようで、正真正銘のバリ人であるということを表現して、バリ人から信用を得ようという意図は伝わってくるものの、化粧までして、結婚の衣装で登場しなくても良いのではないかと思ってしまう。同じように何故か、いち枚のポスターに自分の写真をみっつも掲載しているものもあって、ここまでくると自分をアピールしたいという意欲のみで、もう少しアイデアがあってもよいのではないでしょうか。
とりあえず選挙ポスターは視覚重視、見た目で勝負ということで、こんなポスターもあります。
バリの男性の踊り子の衣装(バリス)のものは、実際この人物が踊り手であるか否かは不明ですが、さわやかな笑顔が好印象ですね。それぞれ、皆多少なりとも自らの容姿に自信を伺わせるポスターです。
とはいえ、上半身裸でもOKというのは、なんでもありのバリならではないでしょうか。
デザイン的に背景にバリの文化や宗教を取り入れ、バリらしさをより強調しようと意図されたものもあります。しかしこれでは本人よりも踊り子の印象のほうが強烈で、まるで踊りのポスターのようになってしまい、すっかり本人が負けてしまっています。
このようにお寺にお参りする人々を背景にするのも、「私もよくお寺へお参りに行きます」と善人をアピールしようとしているのでしょうが、画像が良くないのと、背景がごちゃごちゃしすぎていて、全体的に汚い感じになって、返って逆効果になってしまっているようです。

バリの路上に掲載されている選挙ポスターは、バリ人であることや、バリらしくあることを意識されているものが多く見受けられます。
しかし、そんな中にバリでは犯罪ともいえるような、悪名高き歴代大統領、スハルトと握手を交わすイスラム帽子の人のポスターもあったりします。
もちろんバリ人だからといって、バリを強調しているだけではありません。個人の趣味や仕事などで勝負しているポスターもあります。
この人はスポーツ推進派なのでしょうか、「運動を推進することがみんなの前進に繋がる!」そんなような言葉が書いてあります。それにしても、何故、ビリヤード・・・?
四コマ漫画のポスターですが、何処から見たらよいのか不明。おそらく、沢山の政党はあるが結局は自分の政党が選ばれてハッピー!・・・こんな意味合いではないかと。加えて本人の顔の羅列。せっかくの漫画なのに面白くなければ意味がありませんよね・・・
バリ人にも、お笑いタレントのような人もいて、「若いアーティストが前進する時がやってきた!」とありますが、一体なんのポスターなのか、お笑いコンテストのポスターのようになってしまっています。
この人は若いので、背後にやさしく見守るお父さんと一緒に写ることでワイルドではない、育ちの良い娘を強調しているのでしょう。「負ける準備も、勝つ準備もできている!」とありますが、勝負のときに、負ける準備が先ではダメではないでしょうか。
男性陣の中にありながら若い女性立候補者のポスターはどうしても目を引きます。学生証の証明写真のようなもの、子供の歌合戦用写真のようなもの、お色気勝負のものなど、色々です。
実際、今回の選挙ではアーティストやタレントなどセレブリティたちの参戦も多い傾向にあるようで、選挙を利用して、名声を得ようという策略のようです。確かに、透け透けの派手なバリ衣装でポーズをとってにこやかにスマイルしているような、まるでブロマイドのようなポスターも時どき見かけます。
バリ衣装を身に纏った女性のポスターにはあまりないのですが、イスラムの布巻きの女性や普通の洋服の女性が力強く女性による変革をスローガンにしているポスターなどもあります。宗教的な背景からでしょうか、イスラム系の女性のほうがより男女平等を望む意識が強いのではないでしょうか。バリでは男性と女性は基本的に別べつの役割を担っていて、男女平等でなければいけない、という意識は薄いように思います。宗教に関わることでも、男性と女性の仕事はそれぞれ違うし、社会活動や文化行事の場においても男女が混同で行われる事は少ないのではないでしょうか。だからあえて男女平等を公に要望しなければならない、とはあまり思わないように感じます。
「変革を望むなら女性を選びましょう!」というスローガンを掲げて、前面に顔をアップでイスラムの女性を象徴する布を巻いています。
こちらは「女性が抜きでは変革は有り得ない!」といういかにも強そうな女性ですね。PDEという政党の闘牛を思わせる牛のマークとよく合っています。
これからバリ暦にのっとって平仮名に行われる約半年に一度のガルンガンとクニンガン(日本でいうお盆のようなもの)と、時を同じくしてやってくるニュピ(バリのサカ暦の一年に一度の新年)と同時期に行われる選挙キャンペーン、子供たちの小・中学校も2週間の休みに入ります。今のうちは選挙など全く興味が無いような態度でいるバリ人ですが、選挙キャンペーンが始まれば、毎日のように選挙カーが大音量で村中を走りまわり、前回の選挙のようにウブド王宮から立候補している人々は自家用ヘリコプターでのキャンペーンも行われるかもしれません。今回は地方議会選挙なので、以前のような派手な選挙キャンペーンではないかもしれませんが、それでも、バリの人々にとっては、道行くバロンも選挙カーも同じなのです。根っからのお祭り好きなバリ人ですから、結局はジェロマデの近所の人びとはウブド王宮の人たちを応援し、選挙カーが通れば皆、家から飛び出して、路上から手を振り大声で声援を送るのでしょう。大人も子供も。そして、投票になれば皆、朝一で投票場へ出向き、投票を済ませ、その後は各家庭で、開票をテレビに釘付けになって誰が当選したのか家族親類で一喜一憂するのです。なんとも平和で暢気なバリ人ですね。
ガルンガンもクニンガンもニュピも選挙も、バリ人にとっては同じことです。そんなバリ人を愛して病まないジェロマデなのでした。
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記事登録日:2009-04-03

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